暑い季節になると増えてくる熱中症。毎年熱中症で亡くなる方は高齢者が多く、特に注意が必要です。 高齢者の熱中症は、本人も気づきにくいため注意が必要です。エアコンをつけなかったり、水分補給を拒否したりする方がいるなど、対策が上手くいかないことも少なくありません。熱中症対策を正しく把握し、高齢者の熱中症対策をしましょう。
ここでは高齢者向けの熱中症対策と原因をわかりやすく解説します。熱中症対策を正しく把握し、高齢者の熱中症対策をしましょう。この夏の熱中症対策にぜひお役立てください。
熱中症の症状とは?
熱中症とは、高い気温や湿度が原因で起こるさまざまな症状のこと。暑いからといって全員が熱中症にかかるわけではなく、その人の体の状態などによっても、症状の有無や程度が変わります。
症状は軽いものだと、めまいや顔のほてり、体のだるさなど。ひどくなってくると、吐き気、頭痛や筋肉痛などを起こします。異常に汗をかいたり、皮膚が熱くなったり赤くなっている状態も熱中症の症状です。
熱中症は、重症になると自力で水分摂取をできなくなったり、意識障害や全身のけいれんなどを起こしたりしてしまい、最悪の場合は命を落としてしまうこともあります。
熱中症の原因は?
熱中症を引き起こす3つの要因は「環境」「からだ」「行動」です。通常、私たちの体は体温が上昇すると汗をかき、熱を発散することで、気温や湿度の上昇に対応しています。しかし、あまりに気温や湿度が高かったり、部屋を閉め切っていたりといった環境だと、体がうまく対応できずに熱中症を起こしてしまうのです。 同じ環境や条件でも「子どもや高齢者、体調がもともとよくない人」などは、体温調節機能が低く、熱中症にかかりやすくなります。健康な人でも寝不足や二日酔いといった体調不良のときには注意が必要です。
また、炎天下での運動や作業、水分補給の不足なども熱中症を引き起こす原因です。 高齢者の場合、もともと熱中症になりやすいうえに、病気や体調不良になっても人に話さず我慢しようとする人もいらっしゃいます。また、エアコンなども「もったいない」といって使いたがらない人もおり、そのような傾向がよけいに熱中症を重症化させる原因となってしまうのです。予防対策には早めの対応をおこなうことが、非常に重要になります。
高齢者の熱中症リスクが高い理由とは?
- 暑さを感じにくい
- 体内の水分量が少なくなる
- のどの渇きを感じにくい
- 我慢・無理をしてしまう
高齢者の熱中症リスクが高いと言われる理由について、詳しく説明します。
暑さを感じにくい
通常は外気温が上昇することに伴って体温が上がれば、体が暑いと感じて汗をかくなど、体温を下げようとする機能が自然と働きます。しかし、高齢者はこのような体温調節機能が低下してしまうといわれています。たとえ体温が上昇していたとしてもうまく体が対応できず、体温を下げることが難しくなるのです。また、体が体温を調整しにくくても、暑さを感じれば涼しい場所に移動したいと感じたり、エアコンを作動させるといった、体温を下げるための行動をとるもの。しかし、暑さを感じにくい高齢者は、体温を下げようとする行動をとろうと思いにくいため、結果的に熱中症になってしまいやすいのです。
体内の水分量が少なくなる
高齢者は、若年層よりも体内に保持している水分量が少ないとされています。体温を調節するために水分は不可欠ですが、そもそも体内に含まれている水分量が少なければ、体から少しの水分が失われただけで熱中症になりやすいのです。体温調節だけでなく、体の老廃物を排出するためにもある程度の水分が必要。しかし、「トイレに通う回数を抑えたい」といった理由で意図的に水分摂取量を控える高齢者も多いため、日常的に脱水状態になっている高齢者は意外と多いです。食事にも水分が含まれていますが、食事摂取量が低下した高齢者はさらに脱水状態になりやすく、熱中症になるリスクが高いといえます。
のどの渇きを感じにくい
体内の水分が少なくなれば、人間は自然とのどの渇きを感じるようになり、水分を摂取したいと感じるようになります。しかし、高齢者は体が脱水状態になっていたとしても「のどが渇いた」と感じにくいのです。のどの渇きを感じる機能が低下すると、いつまでたっても脱水状態が補正されず、熱中症を発症するリスクを高めてしまいます。たとえ大量に汗をかくような運動をしていなかったとしても、日常的な汗、尿や涙などのように常に水分を排出しています。入浴中や睡眠中など、気づかないうちに多くの水分が失われているケースもあるため、意識的に水分を摂取することが大切です。
我慢・無理をしてしまう
熱中症対策のために水分摂取が重要だと知っていても、高齢者によってはつい我慢や無理をしてしまう人もいます。「周囲の人達に迷惑をかけたくない」「夏は暑いものだ」と言って熱中症対策に必要な行動をとらないことで、熱中症を発症してしまう高齢者は多いです。今まで大丈夫だったからといって、必ず熱中症にかからないわけではありません。近年の異常気象が多発している状況を考えると、体が耐えられないような暑さが続いてしまう危険性が高いので、今までの生活様式を変化させる必要があります。とはいえ、これまで過ごしてきた生活様式を突然変化させるのは簡単なことではないので、少しずつ身につけていくことが大切です。
熱中症を予防する方法は?
1.涼しく過ごせる環境を整える
「気温・湿度」を測って現在の温度を知る部屋に温湿度計を置き、こまめにチェックしましょう。室温は28度以下、湿度は50~60%くらいに保ちます。ただし、室温が28度でも湿度が80%以上ある場合は注意。暑いと感じたときには熱中症を発生している可能性もあります。早めの行動を心がけましょう。
「暑くないから」「電気代がかかるから」といった理由で、暑くてもエアコンをかけない高齢者は多いです。しかし、夏は人間の体が耐えられないほど室温が上がってしまうことも…。場合によっては寝ている間に熱中症を発症してしまい、命の危険にさらされる人もいるので注意が必要です。熱中症にならないための適正温度や湿度を理解しておき、たとえ暑くなくても室内温度を涼しく保っておくことが大切になります。エアコンや扇風機をうまく利用して27〜28℃前後に室温を管理しましょう。
2.こまめな水分補給と塩分摂取
汗をかいて脱水状態になると、熱中症を発症しやすくなります。のどが渇いたと感じにくい高齢者は、定期的に水分補給を心がけることが大切です。また、体の水分が排出されるときは、塩分も同時に排出されます。塩分が含まれた経口補水液や食品を、基礎疾患の有無や主治医の意見も参考にしながら、適度に摂取しましょう。
3.外出は控えめにする
気温の高い時期でなければ外出により体を動かして気分転換や体力の維持をすることが大切です。しかし、夏などの気温の高い時期に外出すると、汗で体内の水分が失われてしまい熱中症を発症するリスクを高めてしまいます。暑い時期は外出を控えめにすることが大切ですが、もし外出する場合は服装や朝方、夕方の涼しい時間帯にするなど時間に十分配慮して、体温上昇を防ぐ対策をとることが重要です。
4.入浴&就寝時も注意が必要
就寝前や起床後の水分摂取に加え、枕元に飲料を置いておくと安心です。また、就寝時のエアコンの使用を「からだによくない」と考える方もいますが、それは使い方次第です。室温を28〜29度に保つように連続的にエアコンを使用することで熱中症対策に加え睡眠の質も上げることができます。
熱中症の種類
1.熱失神
熱失神は、暑い環境でじっとしていたり、急に立ち上がったりした時、運動後といったタイミングでに起こるもの。上半身に溜まっていた血液が下半身に集中することで、血圧が下がって脳血流が減少することで起こるとされています。めまいや失神などの症状が見られ、涼しい場所で足を高くして横になっていると改善することが多いです。
2.けいれん
熱失神の状態が悪化すると、筋肉痛や筋肉のけいれんといった症状を起こすようになります。いわゆる「足がつった」といった症状で、脱水が進んで体内の塩分が少なくなることが原因とされています。汗を多量にかいた時に起こりやすく、涼しい場所での休息はもちろんのこと、水分とともに適量の塩分を補給することが大切です。
3.熱疲労
熱疲労は、体内の水分や塩分の喪失が進み、補正が追いつかない状態のことです。体内の血流が維持できなくなることによって、失神などさまざまな症状が起こります。その他にも、めまいやふらつき、筋肉痛や頭痛など、熱失神や熱けいれんと同様の症状が出現するケースもあるため、判断が難しいのがやっかいなところです。熱疲労の状態を放置すると、さらに重症度の高い「熱射病」へ移行する危険性もあり、早めの対処が重要になります。
4.熱射病
熱射病は、熱中症の中でも最も重症度の高い段階とされています。体温上昇や脱水が高度に進んでいることから、皮膚は赤く乾燥し、暑くても汗がでないケースもあり、通常の体温計で測定できないときもあるほどです。体温が40℃を超えると、心臓や肺、腎臓や肝臓、脳といった生命維持には欠かせない臓器にダメージを与えることから、場合によっては命の危険にさらされることもあります。後遺障害をのこす危険性もあることから、高度な医療機関で専門的な治療を受ける必要があることを知っておきましょう。
熱中症になってしまった場合の対処法は?
1.意識の有無の確認
まずは意識の有無を確認しましょう。気づいた時点で意識がなければ、すぐに救急車を呼びます。意識はあるようだけれど、「反応がいつもと違う」「話し方がおかしい」といった場合は、なるべく早く病院に向かいましょう。
2.涼しい場所に移動させる
次に、本人を涼しい場所に移動させます。室内ならば冷房の効いた場所に、屋外ならば日陰などに移動させてください。可能であれば、衣類をゆるめたり脱がしたりして、体にこもった熱を逃がしてあげましょう。 もし手元に冷却材や氷があれば、首や脇の下、足の付け根などを冷やします。なければ水を皮膚にかけて、うちわなどであおいでもよいでしょう。
3.水分の補給
涼しい場所に移動ができたら、水分を補給させます。このとき、汗をかいたときに失われる塩分を同時に補給するため、ミネラルウォーターなどではなく、スポーツドリンクや経口補水液を飲ませてください。咳きこむことを防ぐため、水分は少しずつ飲ませましょう。吐き気や嘔吐を訴えている場合は無理に飲ませてはいけません。
4.症状がひどい場合は医療機関に
水分を自力で飲むことが難しい場合は、内科などの医療機関を受診しましょう。医療機関では、点滴で水分を補うなどの処置をしてもらうことができます。医療機関の受診は救急車の要請でもいいですし、救急外来などを受診してもかまいません。 熱中症にかかった後に、対応の間違いや遅れが出ると、取り返しのつかない事態になってしまうことがあります。「もしかして」と思ったときは速やかに対応し、できれば病院へ行くようにしましょう。
まとめ
ここで説明した内容を参考にして、熱中症にかからないような生活習慣を身につけるとともに、熱中症を発症した場合に適切な対処ができるようにしておきましょう。
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